⑨同期の疎通

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 うっかり涙が出てきてしまった。もし一歩間違えたら……? 姉が強気な女性というのはわかってはいたが、それでもそれは悪手だと妹として思ったのだ。 「うん……。そのあと教官からも、……父さんからも怒られた。二度とやるなと。聞く耳もたない男性上官もいるだろうけれど、相談を諦めるなってね……。それでもどうにもならないことあると思うんだ。だから、改めたいんだよ。せめて私のところではね」 「それは俺もおなじだ。あの時もし……と思っていたし、女性を女性として扱えば正しいことなのに、なんであんな間違いに自ら突っ込んでいくのかと理解不能だった。明るみになれば自分たちに降りかかってくるのに、リスク管理できていないというか、めんどくせーことする男がいるなあが俺の感想。同期の女性たちがそんな目に遭ってたら見過ごせないだろう。ここで見過ごしたら、これからこの組織で何度もそれを繰り返して、そのたびに、俺の中で過ちの印がつくようになる。今となっては、妻も自衛官だから、余計に許せないことだ。自衛隊だけじゃない。娘が将来どこかの組織に属するときに、そんな目に遭ってほしくない」 「だよね。館野君なら女性のことを考えてくれる上官になってくれるよね。信じてる」 「もちろん。なにかあれば、俺にすぐに連絡してくれ。どこにいてもなんとかする」  百花姉がほっとした顔になった。 「よかったー。館野殿と同期だった幸運だよなあ」 「モモタロウが一緒だったから、俺の中で考えられる力を与えてくれたとも思っている。男同士だけだったら気がつかなかったな」 「まじで、伊藤陸将のようになってよ。伊藤陸将もお嬢様が自衛官だから、絶対に、ハラスメントは絶許だよね」
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