⑨同期の疎通

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 同期ふたりがパパママになっても同期のように、ふたりしんみりと頷き合っている。 「同期っていいね。俺、羨ましくなっちゃうんだよな……」  岳人パパの言葉に、今度は柚希も頷く。 「私も販売員ながら、荻野製菓で支えあってきた同期がいるのでわかります」 「俺も。フリーランスになっても大手から仕事を回してくれるのは、同期だったりする」  大事な存在だなと、自衛官でなくとも共感しあえるものだった。  だが柚希には苦い思い出もある。  萌子のことだ。  彼女もある時までは、毎日一緒に精進していた同期だったのに……。でももう何年も会っていないし、何年も連絡が取れていない。  いま柚希が親しくしているのは、同期でリーダー的存在だった村雨女史。彼女とは数ヶ月に一度会う食事をしている。その時に萌子のことは一度は話題になる。 『萌子、まだ荻野にいるんだよね』と柚希がこぼすことから始まる。村雨女史も『私にも連絡はこなくなっちゃったよ。同期会も大多数が結婚してからやらなくなったでしょう。でもまだ工場で頑張っているみたいだよ。工場で管理職している田代君はときたま休憩室で目撃するみたいだけど、会話とかはしないみたい。いちおうカレシがいるみたいだよ、社外の人』――が、最新情報だろうか。  柚希の結婚が決まった時も、式に招待をするかどうか悩んだ。新郎が彼女が憧れていた小柳店長になるからだった。  村雨女史に相談すると『同期を全員招待するなら萌子にも招待状を出すべき。あとは萌子の気持ち次第』と言われ、それもそうだと柚希は思いきって招待状を郵送した。
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