⑨同期の疎通

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 姉と館野三佐も会えそうで会えなかった同期のようだったが、会えばこうして意気投合できるのも同期なのかもしれない。  柚希もそんなふうに感慨深くこれまでを噛みしめていると、リビングには子供の泣き声が響き渡る。  父が嬉しそうにだっこしていた孫の一路が、お祖父ちゃんの腕の中で反り返るように泣き出していた。その泣き声にびっくりして、拓人君が抱っこしていた妹の清花ちゃんが泣き出す。 「あ、一路。そろそろお腹すかす時間だった」 「清花も疲れてきたかな?」 「お昼寝マット、隣の部屋に準備してくれているから、そこ使って良いよ」 「ありがとう。寿々花にも伝えるよ」  自衛官同期生のお話から、一気にパパとママに戻っていく自衛官のふたり。ちびっ子たちはママと一緒に、芹菜義母が準備してくれたママとお子様のためのお部屋へと移っていった。  今度は手が空いたたっくんが、岳人パパの隣へと移ってくる。 「パパ。もう少ししたらセッションの演奏会してもいいかな」 「ママたちがちびっ子のお世話が終わって、ちびっ子たちの様子を見てからな」  セッション演奏会。これも館野一家が小柳&神楽家へ遊びに来てくれた時の恒例の催し物。拓人君がポータブルの電子ピアノを、そして音楽隊の寿々花さんがクラリネットを持ってきてくれて、ふたりがセッションをしてくれる。いちばん楽しみにしているのは芹菜義母だった。  もちろん。定番は『赤いスイートピー』。芹菜義母も大好きな世代だからだった。とても喜ぶ。そして盛り上がる。  今年もポプラの木が遠くに見えるこの家で、素敵なメロディーが煌めくように庭へと流れていく。
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