⑩新しい娘たち

3/8
前へ
/916ページ
次へ
「そうですよ。ママ。私、芹菜ママを空に連れて行きたい。ママ、一緒に大空に行こう。育休を手伝ってくれた御礼をさせて。ううん、私の新しいお母さんに、見てほしいの。私がパイロットとして頑張るところを!」  示し合わせたわけではない。でもここは姉妹か、柚希と百花姉は声を揃える。 「芹菜ママはもう、私のお母さんなんだから」 「芹菜さんはもう、私とモモ姉の母親なんですよ」  揃って姉妹で驚いて顔を見合わせたほどだった。  仰天している姉妹を見て、芹菜義母も目を瞠っておののいている。  しかし、そのあとすぐ、表情を和らげて笑い出したのは芹菜義母だった。 「女の子ふたりの声が揃って、びっくりしちゃった。すごくかわいいの!」  いやいやもう、三十過ぎた姉妹ですけど、かわいいって――と柚希は思ったが、なんと姉の百花はちょっと照れたようにして嬉しそうに微笑んでいた。『かわいい』と言われたのがちょっと嬉しかったよう?  さらに、そうして笑い出した義母なのに、今度は目を潤ませ光る涙を浮かべている。 「娘がほしかった、いたら、どう楽しかったのかなって……。事故に遭った後、家でどこにもでかけられず、車椅子生活の日々で。ひとりで留守番をしている時に思い描いては、泣いていたの。広海にも弟とか妹とか一緒にいられるようにしてあげていたら……、あの子ひとりに、こんな苦労はさせなかったのにって。なのに、いまは……、ユズちゃんがいてくれて、かっこいいモモちゃんがいてくれて……。そんな私が、あのチヌークに乗れるの? ねえ、ほんとうに乗っていいの? 信じられない、私にそんなことが起きてるだなんて。かわいい姉妹の娘が出来て、一緒に空へ行けるだなんて……」
/916ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5112人が本棚に入れています
本棚に追加