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「母さん、良かったな! ずっと言っていただろう? 自衛隊に行ってみたい、チヌークに乗ってみたいって。しかも百花義姉さんの操縦だなんて、凄いことじゃないか!」
「そうなのよ! 広海も一緒に来てくれるでしょう」
「もちろん。俺だって乗ってみたかったんだ。しかも自慢の義姉さんの操縦だろう。千歳と伊万里君に伝えたら羨ましがられるよ絶対!」
荻野の姉弟がなかなか経験できないことが俺の自慢――と、広海が得意そうな顔になった。
義弟に『自慢のお姉さん』と言われた百花姉も嬉しそうで、柚希も顔がほころぶばかり。
制服の姉を囲んで、小柳の義母と若夫妻と賑わう中、ベビーベッドで眠っていた一路も目覚めてさらに賑やかに。
この幸せな和のまま、このまま、空に持っていきたい。
柚希はこの和がいつまでも続くことを、その時にさらに願いたいと心に決めた、この時――。
◇・・・
その土地の『良い気候の季節』はそれぞれかもしれない。
北国では九月がそれなのではと柚希はよく思っている。
あれからずっとわくわくして待ちわびた日がついにやってくる。
芹菜義母も前もって体調を整えることに神経を尖らせていたほどで、今日は万全の態勢でおでかけの準備を終えていた。
広海と柚希も準備を終えて、芹菜義母に付き添い、出発をする。
でかける時に、父の勝が見送ってくれた。
「芹菜さん。楽しんできてくださいね。今日は館野も受け入れで待機してくれているとのことなので、安心してくださいね」
「まあ、館野三佐自ら? それなら安心ね」
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