⑩新しい娘たち

7/8
前へ
/916ページ
次へ
 柚希と元レンジャーだった父・勝に出会って新しく家族になり、芹菜義母と広海の生活は一変する。繋がった新しい親族には、レンジャー教官だった父を見倣(みなら)った婦人自衛官の娘がいて、夫になった心路義兄は第一空挺団の一員。自衛官が親族になって、芹菜義母は新しい娘が操縦する大型ヘリコプターに興味が止まない。 『あんな大きなヘリコプターを空に持ち上げちゃうって凄い。モモちゃんがそれをするのよ。ほんと凄い!』  自分のことのようにはしゃいで、喜んで、夢見心地にヘリコプターパイロットの女の子になったような顔で、思い馳せている芹菜義母はほんとうに少女のようだった。  だが時に『私も違う生き方、もっとできたのかな』なんて呟くこともある。きっと深窓のお嬢様のような生活だった義母にしてみれば、百花姉の生き方は正反対なのだろう。少し羨ましそうだった。  そう思っていたら、憧れの対象ともなりそうだった百花姉が逆に『芹菜ママみたいに女の子らしくなれない』という沼に落ちてもがき始める。  その時にきっと『私は私、モモちゃんはモモちゃん』と思えたのではないのだろうか。姉の産休育休期間を見守ってきた柚希は、振りかえるとそのように感じているのだ。  でもこの期間中、芹菜さんには娘はひとり増えたとも言えるのでは。しかも柚希と百花という姉妹で。  今日はその娘が、ママを空に連れて行ってくれる。  ワクワクするのと同時に、芹菜義母は……。  事故で失った足、突然に逝ってしまった夫の写真。交互に確かめている義母を見ている柚希は『今日は芹菜さんがほんとうに抜け出す日になるのでは』と思えて仕方がないのだ。
/916ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5113人が本棚に入れています
本棚に追加