⑪ふたりきりで――

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「すげえな。俺も見たかったけど、やっぱり本物は迫力あるな!」 「あれをモモちゃんが? 凄い!!」  そのモモちゃん。どこにいるの? 操縦のお仕事が終わるまで会えないの? 芹菜義母が百花姉をきょろきょろと探し始める。  コックピットの近くにいるのではとチヌークの前方へと目線を向けるが、小柄な柚希と芹菜義母はもとより高身長の広海ですら人が沢山いて見えない状態だった。 「芹菜さん、ユズちゃん」  そんな声が聞こえて振りかえると、制服姿の館野三佐がそこにいた。  夏の陸自制服の彼を見るのも久しぶり。ただでさえ美男である彼が凜々しい制服でいたので、柚希は思わず目を奪われる。芹菜義母も『きゃー、やっぱり素敵ね』と惚れ惚れとした眼差しで、彼との再会を喜んでいる。 「いらっしゃい。モモタロウのところに案内するよ。こっちついてきて」  搭乗体験に当選した一般市民の列から外れ、颯爽としている三佐の後へと三人でついていく。  一般市民の人々が並んで待機している場所からロープで隔離されているエリアへと、館野三佐が手引きをしてくれる。  そこはチヌークの操縦席搭乗口前、迷彩服とフライト装備をすでにまとっている隊員が待機しているエリアだった。 「東二尉。お連れしたよ」 『許可なく侵入しないように』と注意書きをされているプレートが下げられているロープが目の前に。それを館野三佐が軽々と持ち上げた。  そこをくぐるようにと、ついてきた柚希と広海、そして芹菜義母へと微笑みかけてくれる。  ロープをくぐっていると、チヌークの操縦搭乗口そばにいた隊員数名、館野三佐の声かけで、一斉にこちらへと視線を向けてくる。
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