⑫マザーズデイ・フライト!

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 芹菜義母はまた孫が増えること、今度はほんとうの意味での初孫。しかもある時から『女の子』とわかって、ばあばフィーバーでいつも忙しそうに動き回っていた。しかも念願の『女の子ベビー』がやってくるため、もういまから『あれもこれも手作りにしちゃう』と、洋服用の生地などクラフト素材を買い集めることに勤しんでいた。  家族や先輩たちから沢山の手を借りて、柚希の出産は安泰で迎えられた。  お祝いも賑やかだった。荻野の姉弟も来てくれたし、自衛官ファミリーも駆けつけてくれた。小樽からは父の勤め先所長さんである優吾さんも、お得意の手芸でかわいいベビーグッズをたくさん届けてくれた。  生まれてまだ二ヶ月。柚希も少し余裕がでてきたところ。  ベビーベッドのそばにあるソファーで授乳をしていると、ガーデニングをしていた芹菜ばあばがやってくる。 「花梨ちゃん、おっぱいだったのね」 「はい。だんだんリズムがついてきて見通しができるようになってきましたね」 「ふふ、一路君のときを思い出すわね」 「ほんとですね。お姉ちゃんがお手本を見せてくれたおかげで、私も予測が付けやすくて……。お姉ちゃんは大変だったんですけど……」 「モモちゃんは、ユズちゃんのお手本になれたこと、自分が先に学んで妹の力になれることのほうが嬉しいはずよ。いまなんて、一路君を背負ってパワフル自衛官ママさんじゃない。そもそも、私たちが力を貸していることにすら気兼ねするような子だもの。自分から力を貸すことが性分で生きていける女性なのよ。甘えておきなさい」 「はい。ママ――」  いつのまにか柚希も姉同様に芹菜義母のことを『ママ』と呼ぶようになっていた。芹菜義母も、もう姉妹の母親そのものだった。
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