⑫マザーズデイ・フライト!

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「え、母さんみたいに? いつまでも乙女なってこと? いやいやいや、乙女チックは母さんだけで充分」 「え、大人になっても乙女で素敵じゃない」 「やめてくれ。花梨は柚希にそっくりでいいんだって」  背後のキッチンに入っていた芹菜義母が『あら、私みたいなのはダメなの』と息子を睨んでいたが、『でも私もユズちゃんみたいにかわいく育ってほしいわ』と朗らかに笑い飛ばしている。  もう小樽で出会った時の弱々しさも、打ちひしがれて静かに過ごしていた母子の影はない。  寄り添っていないと生きていけなかった母子ではない。  広海はマザコンかもしれないと思われるような男性ではなくなっている。  芹菜義母は自立をしたし、頼りがいがあるお姑さんだ。  広海は妻と娘をいちばんに思う男として自立している。  でも家族としていつまでも一緒にいたい。  そして柚希も、この家の妻で嫁で母になろうとしている。 『ただいまー』 『たたいまああ』 『ただいまーうほうほー。じいもいっしょに帰ってきたぞー』  続いて姉の百花と、保育園通いの一路、父の勝まで一緒に帰宅。  リビングが一気に賑やかになっていく。  やがて、心路義兄も制服姿で帰宅する。  そこから家族揃って、一気に子供たちのこと、夕食のこと、片付いていない家事を協力してこなしていく。  一路はもう元気いっぱいの二歳児で目が離せなく、百花姉が荒っぽい言葉でおいかけまわしたり、逞しいレンジャーの心路パパががっしり捕まえてお風呂に強制的に連れていっちゃったり。  柚希と芹菜義母は夕食の支度。その間、父の勝は洗濯物を片付けてくれたり、広海は娘の花梨のめんどうをみてくれたり。
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