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僕は読み終えた後、すぐに建物の中に入った。とりあえずここに居る人に助けを求めよう。そうしたら、どこか安心できる場所を見つけ出そう。そう思って矢印のマークが書かれている所へと進んでいった。ここも周りと同じように工場のようだが、受付らしき場所には誰もおらず、周りに機械も置いていなかった。
奥へ奥へと歩いて行くと、「止まれ」の標識があった。指示に従うと、タンクの前に初老の男性が現れた。
「ここに引き付けられた方ですか?」
「はい。気づいたらここにいました」
「そうですか。ならばどうぞお掛けになってください。いくつか質問させていただきます」
男性はそう言うと、僕に名刺を渡した。
「国道隆さんですか。居無秀と申します。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします。さっそくなんですけど、居無秀という名前はご自身でつけたのでしょうか?」
「はい?」
「あっ、覚えていらっしゃいませんか?それでは年齢は?」
「あっ、えーと、確か19歳あたりだったかな」
「そうですか。大体で結構ですよ」
「以前はどこにいらっしゃったか覚えていますか?ここに来る人達はみんな特殊な方たちですから」
「そうなんですか?」
「ええ、そうなんですよ」
まるで面接みたいじゃないかと思いながら、僕は国道さんと話を続けた。彼の放つ言葉の節々に違和感があったが、公園のベンチで目を覚ました時と同じように、徐々に受け入れていった。そうして10数分が経過したのちに、彼は立ち上がって僕の手を握った。
「大丈夫そうですね。ようこそ、幽霊保護会社へ」
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