VI

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 僕は湯冷駅に入り、電車を待たずに線路の上を走った。ただひたすら電車がが見えるまで、余計な事は一切考えずに突き進んだ。その後はホームにのぼって、工場の中へと入った。標識は未だにその他注意となっていた。そのまま2階に行き、国道さんの部屋を見ると、影が優華を取り込もうとしていた。  「やめろー!!!」  僕は今まで出した事のない大声で、影と優華の間に入り込み、守るようにして床に倒れこんだ。  「大丈夫?」  ぜえぜえと息切れしている僕に抱きかかえられながら、優華は離れずにそう訊いた。  「そっちこそ大丈夫なの?」  僕は訊き返した。  「うん。ありがとう」  「また、夏になったら一緒にラムネを飲もうね。約束だよ」  「うん。楽しみにしてるね」  僕たちはしばらくの間、抱きしめ合っていた。呼吸が元に戻ってきた時に、心の中でずっと凍っていた氷が解け始めていた。
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