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 幽霊保護会社という聞いた事のない単語を耳にした時、僕は幽霊だった事を思い出した。  そうだった。僕は死んでいた。どうやって死に、なぜ成仏していないのかは分からないが、間違いなく生きてはいなかった。  「そろそろ電車が駅に着く頃ですよ。仕事内容は明日教えますから、今日はゆっくりしてください。湯冷(ゆれい)駅という場所にあなた用の部屋があります」  「分かりました。本日はありがとうございました」  「いいえ」  僕はとりあえず記憶を整理するのを一旦やめて、駅のホームへと向かった。既に少し古めの電車が止まっており、上部のパネルには「湯冷線 湯冷行き」と書かれていた。運転席の近くには人が立っていて、僕が軽く礼をすると、お疲れ様ですと言ってくれた。僕は2両編成の乗り物に揺られながら、外の景色を眺めた。特に変わり映えの無い景色だ。いくら電車が進んでも、運転手以外に人の気配は感じなかった。  「湯冷に到着です」  人力のアナウンスの後にドアが開いた。どうやらこの駅と裏橋海駅しか停車する場所が無いようだ。僕は今一度運転手に礼をして、そのまま宿泊所と書かれた家へと向かった。  すでに鍵は開いており、中は畳の部屋と布団だけというシンプルな構造だった。  「こういうのを六畳一間っていうのかな」  僕は電気をつけて、コップを取り出してキッチンの蛇口へと移動した。のどを潤して、その後にシャワーを浴びた。髪は乾かさずに、そのまま小窓を開けて遠くで泣いているセミの声を聴いた。
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