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※〔〕内は編訳者註。
(1)第一 十二 より
ある時、生誕の管理を司る上級使徒の一柱〔本書では、上級使徒は神と同等または近しい存在と考えられているため、単位は『柱』と表記されている。なお、下級使徒は『人』〕が、神に質問した〔ここで言う『神』は、前述の生誕の管理を司る上級使徒達を束ねる上位の存在を指し示す〕。
「神よ、こちらの宿魂〔胎児時点で魂を宿らせる事〕先について、質問の許可を」
神は「諒承する」と答えた。
使徒は淀みなく質問した。
「こちらの宿魂先である胎児の未来予測を確認したところ、寿命が一年未満の確率が●割〔管理法により削除、閲覧可能な他の資料等から八割から九割と推測〕、更に誕生前に寿命が尽きる確率が●割〔同様の理由で削除、三割程度と推測〕と出ました。これでは魂を宿す意味があまりに無いと考えていますが、必要でしょうか」
神は冷静に答えた。
「その疑問自体が愚かである。胎児の肉体が出来上がれば、如何なる理由でも結果でも、宿魂は必ず行わなければならない」
〔以下は旧版のみ。新版での補足によると、創作の可能性があるため削除されたと記載していたが、他閲覧可能な資料などで確認した限り創作の可能性が低く、後述の使徒の回答にそぐわないため、掲載した〕
神は更に答えた。
「我々は新たな生命を宿す器があり、そして望む者ある限り、胎児に魂を宿す義務がある。それをないがしろにしてはならない。また、予測は不完全である。寿命が予測より上回る事もある。確率が高いからと言って、義務を怠けてはならない」
〔以上、旧版掲載分〕
すると使徒は「私が浅はかでした。申し訳ございません。丁寧なご説明、ありがとうございます」と答えた。
〔宿魂先である胎児について、後にどのような人生を過ごしたかについて記録した書物が存在しているが、こちらも管理法により、神と一部の上級使徒以外は閲覧不可であり、他の記録書への引用は一切許可されていないため、詳細は不明である。しかし編訳者が閲覧可能な記録を可能な限り全てあたってみた所、本書を記録した年代で、このような事例で宿魂を行った場合、寿命が未来予測を上回る確率は一割も満たない(具体的な数字の記載は、管理法違反にあたるため控える)〕
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