記録書「神使徒問答」 生誕についての問答訳三選

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(2)第八 三 より  ある時、生誕の管理を司る上級使徒の一柱が、神に質問した。 「神よ、こちらの宿魂先について、質問の許可を」  神は「諒承する」と答えた。  使徒は淀みなく質問した。 「こちらの宿魂先である胎児の未来予測を確認したところ、生誕より十五年程度で最低六人以上の虐殺を実行し、さらに十年後には百人以上虐殺、その直後に縊死(いし)するとの事でした〔確率や具体的な虐殺方法については不明。少なくとも管理法で確認できる資料から裏付けが取れず〕。あまりにも異常です。私は反対です」  神は冷静に答えた。 「その疑問自体が愚かである。胎児の肉体が出来上がれば、如何なる理由でも結果でも、宿魂は必ず行わなければならない」  使徒は反対の意見と姿勢を崩さなかった。 「しかし、留保すべきです。もし実現した場合、前例として残り、模倣する者も現れる可能性があります。生命が減ることは避けなければなりません」  神は毅然とした態度で「その考慮は我々の義務ではない。生誕に例外はあってはならない」と答え、さらに続けた。 「その理不尽が例え現実化したとしても、その時に対峙する生命達が、自ら乗り越えなければならない。今の我々は、義務を遂行するだけの存在である。我々は教科書ではない。我々は冷酷でなければならず、生命達からの憤怒と憎悪は無条件で受け止めなければならない。それが我々の義務である」  使徒は静かに考えた後、神の言葉に従った。
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