記録書「神使徒問答」 生誕についての問答訳三選

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(3)第三十 二十六 より  世界再誕〔本書では、既に創造した世界を何らかの理由で滅ぼし、新しく創造する事。この時点は既に七回目〕が迫る頃の事、生誕の管理を司る上級使徒の一柱が、神に質問した。 「神よ、こちらの宿魂および宿魂先について、質問の許可を」  神は「諒承する」と答えた。  使徒は淀みなく質問した。 「あの世界で宿魂して誕生した時間を計算したところ、完全に落ちる〔本書では、世界を意図的に滅ぼす時は『落ちる』『落下』『降下』などと表現している。なお、世界の創造や誕生は『上がる』もので、逆に破壊や滅亡は『下がる』ものだと考えられている〕のが残り十八日程度です。全く持って意味がありません。少なくとも生命を望む者には苦痛でしかないです」  神は冷静に答えた。 「その疑問自体が愚かである。胎児の肉体が出来上がれば、如何なる理由でも結果でも、宿魂は必ず行わなければならない」  神は更に答えた。 「たとえ刹那だとしても、生命を宿す器がある限り、そして生命を望む者ある限り、宿魂を進めよ。それは我々の義務だ」  使徒はこれ以上言葉にすることなく、従った。 〔以下は新版のみ。こちらは裏付ける資料が無いため、創作の可能性がある〕  しかし使徒は自らの義務に戻った時、別の上級使徒にこう嘆いた。 「やはり納得がいかない。意味があるのか」  後にこの上級使徒は、宿魂を行った。  すると、その生命は世界の終焉を理解しながらも、誕生を喜んだ。そして十八日後に世界は落とされ、新たに持ち上がった〔前述した通り、世界の創造や誕生は『上がる』ものだと考えられている。新たに世界が創造された場合は『持ち上がる』『昇らせる』などと表現する事が多い〕。  上級使徒はその事を知った後、自らの義務を放棄した〔自らの生誕に関する職務(『義務』と表現している)を辞める事は、死と同義である〕。 〔以上、新版掲載分〕
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