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組み合わせていた両手を解き、指先で鼻梁をさわろうとして、僕はその動きを止める。
絵本が閉じる音と共に深く息を吐くような音がしたからだ。集中して、呼吸をすることさえ忘れているようだった。
「良かったです。絵本の世界に迷いみました。読ませて頂き、ありがとうございます」
と、彼女が微笑んでいる。読み終わると、彼女がまた消えてしまうかもしれない……。そんな事を考えてしまった。
「もっと頁を増やしておけば良かったかな」
少し後悔しながら僕は彼女の顔を見る。
彼女が青い空を見上げていた。その様子を不思議に思いながら僕は訊いてみる。
「あの、どうして再び見えるように? 成仏されたんだろう、と思っていたのですが」
彼女が僕に視線を戻す。大きく息を吸ってから長く吐いた。決意したように口を開く。
「ごめんなさい。ずっと、言えなかった事があるのです。伝えることで傷つけてしまうのではないかと考えてしまって……」
歯切れの悪いその様子に僕は重ねて訊いてしまった。
「何のことですか?」
「再び見えるようになったのは、あなたが、わたしに近づいたからだと思います。絵本を作り上げて、この世への未練が少しだけなくなったのではないかと」
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