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「何を?」
「思い残す事がない為に出来る事を。そうだ、また絵本を作ってくれませんか? わたしはそれを読んでみたいと思います」
彼女が僕に生き甲斐を提案してくれているのかもしれない。
この世界には、こんな奇跡のような時間があった方がちょうど良いのかもしれないと、僕は思った。
これからも続けていくしかないのだろう。作り出した物語を誰かに届けたい。ベンチの上に忘れ物のように置いても面白いだろう。
知らない子供がそれを拾い、わくわくしながら物語の世界に迷い込むのだ。僕と彼女が遠くからそれを見つめて微笑み合う。
ただ、それだけを……。
ひたむきに、願ったにすぎない。
(了)
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