僕と彼女(1)

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 大丈夫なのだろうか、と心配になった僕は立ち上がって振り返る。 「あれ?」  子供の姿がなかった。 「家族が連れて行ったのかな……」  不思議に思って辺りを見回してみたけれど、子供は見当たらない。  不安を拭えないまま構内を進むことにする。今度は立ち止まって顔を左右に振り、困っている様子の小学生ぐらいの女の子に声を掛けられた。赤いランドセルを背負っている。 「すみません。日豊線の上り線に乗るには、どこに行けば良いでしょうか?」 「えっと、上り線ですね。ああ、一緒にいきましょうか?」  と、僕は改札口まで誘導してから、向かうべきホームを指差して教える。 「ありがとうございました」  そう言った女の子が丁寧にお辞儀をして、微笑んだ。そこで僕には既視感が生まれた。どこかで見たことがあるような……。  そう考えながら改札を抜けていく女の子を見送り、更に数歩進む。  すぐにセーラー服姿の女の子が僕の視界に入る。まだ幼さが残っている。中学生ぐらいだろうか。
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