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「頑張って小銭を稼いでいる。ご苦労様だ」
悪い男は見下すように言う。
「お金さえ渡せばアタシが幸せだと思っているのよ。連絡だけはまめにしてくれるんだけれどね。でも、こうやって会えるんだから、亭主は元気で留守が良いのよ」
悪い男がこの悪い女と初めて会ったのはパチンコ店だった。
その日は運が良かった。
座っている椅子の脇には、銀色のパチンコ玉が詰め込まれたドル箱が高く積まれていた。
「馬鹿ばっかりだ」
言葉に出ていた。視界の端にドル箱が入るたびに自然と笑みが生まれる。
「笑える」
溜まっていく銀色の金属の玉が金塊のように見えていた。それは、錬金術で無限に出てくるものだ、と勘違いしそうだ。
「座ったまま片手を動かすだけで、真面目に働く馬鹿を超えられる」
働くなんて馬鹿げている。
「本当に馬鹿ばっかりだよな。なあ?」
誰に訊くというわけでもなく声を発する。悪い男は愉快でたまらなかった。
そうやって悪い男が悦に入っていた時だ。横に座っている女の胸元にみとれた。
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