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近くにある柱に手を伸ばして、逆の手を膝にのせていた。なんとか立てているようだ。
僕は近づいて声を掛ける。
「大丈夫ですか? 具合でも悪いんですか?」
「……すみません。ちょっと貧血みたいで。立ちくらみが」
と、顔色が悪い。
「少し待っていてください」
そう言い残して僕は改札の方に駆けていく。近くにいた駅員に声を掛けると、病人がいる旨を伝えて女の子の所まで案内した。
「体調の悪い方はどちらに?」
そう言った駅員が僕に確認してくる。
「……あれ? おかしいな。さっきまで居たんですが」
セーラー服姿の女の子の姿がない。
「具合が良くなって行ってしまったのか……」
「ああ。じゃあ良いですね」
僕の様子を不審に思ったのか、不機嫌そうに駅員が元いた場所に戻って行った。
そうやって構内を通り抜けると東口を出た。
三十メートルほどの構内を通り抜ける毎にこの調子だ。大都市の駅では、僕は駅から出られなくなってしまうかもしれない……。
「こういうのを巻き込まれ体質というのだろうか……」
そう呟きながら構内にあるコンビニエンスストアの方に曲がる。
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