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男の視線を集める丸い形だ。大きく開いた胸元からその肉塊が大胆にはみ出ている。
「ふうん……」
悪い男は視線をひいて、女の均整のとれた体形を舐めまわすように観察した。二十代の前半というところだろう。
派手な顔立ちだ。きっと子供の頃から美人だと持て囃されてきたに違いない。
悪い男と視線があう。その女が親しげに口をひらいた。
「凄いわね! 溢れそう」
「そっちは溢れているけれどな」
悪い男は女の胸元を見てつい言ってしまう。
「なんだか最近、更に大きくなっちゃって」
そう応えながら両胸に手のひらを当てる。
人に見られることに慣れているのだろう。悪い男が見つめていたことに機嫌を悪くした様子はなかった。それどころか嬉しそうでさえある。注目を集めるのが好きなのかもしれない。
それが悪い女だった。
それから一分間ほど経っていた。
「なあ。昼飯でも一緒にどう? 奢るからさ。美味い店を知っているんだ」
と、悪い男は迷うことなく誘っていた。
悪い女が口角を上げて即答する。
「いいわよ」
食事に選んだのは、悪い男が毎日のように通っているレストラン『neTworK』だ。
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