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そこで食事をする間、悪い女は饒舌だった。
二人が注文したのはその店の看板メニューであるオムライスのセットだ。
……食事を終えた後。
「ちょっと眠くなったから休憩しようぜ」
悪い男は何の躊躇もなくホテルで女の服を脱がしていた。
その日から数か月以上が経った今でも悪い女と不倫の関係が続いている。
運転している車が長い直線道路に入った。
「こういう道を待っていたんだ」
片側一車線の対面通行の道路だ。背の高い街路樹が一定の間隔で植えられている。
「樹と樹の間にある丸くて背の低い木って、なんだかカワイイ」
悪い男は強くアクセルを踏んだ。シートに押し付けられるような感覚と同調して、車が加速する。
「この圧力が興奮するだろ? おい見ろよ。街路樹があっという間に視界から消えていく」
悪い男の視界も狭くなる。歩道側の街並みを認識できないほど形が失われていた。
悪い男は呼吸をすることさえ忘れていた。息を止めた方が集中できる。
もう一段階、速くなりたい。そう考えて、アクセルをべったりと踏み込もうとした時だった。
「あっ! 猫の親子」
悪い女が口をひらいた。
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