僕と彼女(3)

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僕と彼女(3)

 僕と彼女は別府駅に向かって並んで歩いていた。  わずかな時間でも歩いているだけで額から汗が流れてくる。それを手の甲で拭った。 「なかなか暑いですね」  視線を上げてみた。澄んだ青空の中で孤独を楽しむように、太陽が己の地位を主張している。彼女に気づかれないように、僕は視線を下げた。  何度確認しても彼女には影がない。 「もう少しゆっくりコーヒーを飲んでおけば良かったです」  僕は少し後悔する素振りをしながら、会話してみる。 「そんなに暑いのですか?」  一方で彼女は平然な表情のまま、小さな顔を傾げていた。 「もしかして、暑さとか感じないんですか?」 「これも幽霊あるあるですよ……。暑さを感じるのですね? 勉強になります」  と、彼女が不思議そうにする。 「普通に暑いですけれど……」  僕らは別府駅の構内を通り抜けて、東口に近づいていく。  油屋熊八の銅像の横では友人が唄いつづけていた。そのお陰か不思議と脚が軽くなる。
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