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友人が僕の方を見ている。
「何が『そうですね』なんだ? 言い方も気持ち悪いぞ……」
「ああ、あれだよ! 熊八さんが応援したくなるのは他にいないと思ってね。もはや、愛と言っても過言ではない」
僕は慌てながら適当に応えてしまう。
「銅像と抱き合うような趣味は、俺にはないけれどな」
友人が眉間に皺を寄せた。
「いや、まて。冷たくて気持ちよいかもしれない。……ありだな」
彼女が隣で笑いながら言った。
「なんだか変な人ですね」
友人が話題を変えるように訊いてくる。
「これからどこか行くのか?」
「ちょっと食事に行こうと思ってね」
彼女が父親の手帳から盗み見た情報によると、悪い男がよく出現する場所がレストラン『neTworK』だ。
ランチは毎日のようにその店で食事を済ませているらしい。
友人が双眸を更に細くして口角を上げる。
「……いいね。食事ができることには感謝しないといけない。俺は夜しか食べないけれど」
「それだと三倍は感謝できそうだ」
僕はそれだけ応えてからこの場を去ることにする。
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