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「奥の手?」
僕は彼女を見つめたまま首を少し傾けた。
「今日、別府駅に到着した際に何か変わったことはありませんでしたか?」
「変わったこと? ああ、普段とあまり変わってはいないんですが……」
僕は記憶を探り思いついたことを口にする。
「小さな子供が目の前で転びそうになったのを受け止めて。そのあと赤いランドセルを背負っている小学生の女の子に乗り場を伝えました。あとは、セーラー服姿の女の子が体調が悪そうだったので、駅員さんを呼びに行って。それぐらいですけれど」
彼女が口角を上げて席を回るように歩き始めた。
「その小さな子供って……」
そう言いながら僕の背後に移動した彼女の姿が一瞬視界から消える。
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