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「ほら。つい先ほど別府駅前で。覚えていませんか?」
と、彼女が楽しそうにしている。
「もしかして、風船を両手に持った小さな女の子のことですか?」
僕は黒いトートバッグからスケッチブックを取り出して開いた。
「この子です」
「どれどれ」
赤い風船を両手に持った小さな女の子の絵を熱心に覗き込んでくる。前のめりになっている為、僕は目のやり場に困ってしまった。
「わたしの幼い頃の姿ですね。この姿ならよく目立ちます。わたしの事が見える人を探しやすいのではないか、と思いまして。この年で風船を三つずつ持つのはちょっと痛い子ですし」
「確かに目立っていました」
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