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悪い男と悪い女(2)
悪い男はレストラン『neTworK』のハンバーグランチに満足していた。
この店のランチタイムは午前十一時から午後二時までの三時間だ。
「家の料理は上品なだけで、味の薄い食材の塊だ」
独り言のようにそう言う。悪い男は自宅で食事をすることがほとんどなかった。この店の料理はボリュームと味を併せ持った理想的な食事だ。
「ああ。やはり、うまい」
店内はランチ目当ての会社員で賑わっていた。女性客と男性客が半々の割合で席を占めている。
週末の予定や趣味の話をする者。上司らしい人物と仕事の話を続けられている者もいる。
その作り笑いを見て悪い男は微笑んでいた。
「未来はないよ」
と、誰にというわけでもなく声を出す。
次々に運ばれていく料理の匂いが悪い男の食欲をそそった。他人の席に運ばれる料理に目移りしてしまう。
「オムライスも捨てがたい」
「なにっ? あげないわよ」
「……別に、欲しくないよ。というよりも、いつの間に来たんだ? そのオムライス」
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