悪い男と悪い女(2)

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 人を憐れむように目を細くしている。  アイシャドーのせいか深い闇のようだ。  大きな黒目を動かすことなく真っ直ぐ悪い男を見つめている。見つめ返すとその闇に取り込まれそうな気がして言葉を放った。 「……轢いておいてよかった。親子を同時に車で轢く経験なんて、滅多にできない経験だ」 「あなたって……」  悪い女が言葉を区切った。 「若いし外見的にも魅力的だけれど、内面的には改善した方が良いと思うわ。お金を持っていることは大事だけれど!」  悪い男は声をあげて笑う。 「そんな男と不倫をしている女に何を言われようが気にならない」 「へえ、そんな女性がこの世の中にいるの? アタシの知っている人かしら」  悪い女が魅惑的な靨をつくっている。 「偶然にも俺の目の前に居るけれどな」  と、悪い男。 「奇跡ってあるんだね」  更に笑みを増した悪い女が続けた。 「そういえば、さっき言っていた黒い影って、いつぐらいから見えているの?」 「そうだな……」  悪い男は記憶を探るように窓の外に視線を向けた。
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