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「ああ、お前と知り合った頃からだ」
「ふうん。その頃から死神に憑かれているんじゃない?」
そう悪い女が悪戯な表情を作って言うと、悪い男も言い返した。
「だとしたらお前が死神だな」
「あはは、凄い! 正解! ……それで店の外から熱い視線を送っている中年男性の事はどうするつもり?」
「ストーカーまがいに俺のことを追い回している、轢き殺した女子高校生の父親の事か?」
「そうそう。絶賛、あなたを脅迫中でもある」
悪い女が嬉しそうに言いながら、目の前にあるオムライスをスプーンで掬った。
「素人の尾行なんて目立って仕方ないけれど。まあ、見つかることが前提の行動だろうな」
「どういうこと?」
悪い女が眉間に皺を寄せる。どうやら理解できないので機嫌を悪くしたようだ。
「俺は自分が悪い人間だという自覚がある」
「あ、意外かも」
機嫌をよくしたのか、悪い女がオムライスをスプーンで掬い始めた。
「悪い人間は、他人の悪意を想像することができるんだよ。あの父親は謝罪して欲しいなんて、これっぽっちも思っていないはずだ」
悪い男はそう言って口角を上げる。
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