僕と彼女(4)

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 そこには、彼女から預かった薄いオレンジ色のフォトアルバムを置いていた。 「どの思い出からにしよう」  と、何気なく頁を捲っていく。 「大切に扱われていたんだな」  そう想像できるほど、どの写真も撮られた当時の姿を保っているようだった。  持ち主の気持ちを大事にするように両手の指先を使って、ゆっくりと頁を捲っていく。  彼女から依頼されたのは、できる限り多くの絵葉書を父親に送って欲しいということだ。  僕は一枚の写真をじっと観察する。  髪の長い清楚な女性が写っていた。片手で耳にかかった髪に触れている。写された瞬間、髪を耳にかけようとしていたのだろう。彼女の母親だ。 「隣が彼女か。中学生ぐらいかな?」  旅先なのだろう。二人の背後には、一面のネモフィラが広がっていた。  その青い花弁が絨毯のように見える背景を背にして、二人が笑顔を浮かべている。撮影したのは父親なのだろう。 「五年ぐらい前かな……」  その写真を机の上に置いたまま僕は色鉛筆を近くに寄せる。画材をどれにするか迷った挙句、僕は色鉛筆を選んでいた。下書き用の3Bの鉛筆を握る。
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