僕と彼女(4)

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「表情はもう少し明るい方が良いか」  二人がネモフィラを背景にして満面の笑みを浮かべている。楽しそうに見つめあっていた。彼女に視線をむける妻の目元には柔らかい皺ができている。  彼女がこれ以上はないというくらい安心した笑みを浮かべていた。  勿論、そんな彼女の笑顔は僕の想像でしかないのだけれど。 「もう少し花の青色を薄くした方が、人物が目立つかも」  二人が笑っていた。その正面に立っているのは父親に他ならないだろう。父親も笑顔であって欲しい。 「……これは、これは。お上手です」 「え?」  不意に耳元で囁かれた僕は驚いてしまう。  慌てすぎてしまい飛び退くように椅子から転がり落ちていた。椅子も床に倒れてしまう。  僕は床に座り込んだまま見上げていた。  セーラー服を着た彼女が前屈みになって、僕の横に立っている。 「どうして?」  僕は間抜けなことを訊いてしまう。彼女にとっては扉の存在自体が無意味だろうから。  すると彼女が申し訳なさそうにする。 「ごめんなさい。『お邪魔しますよ!』と言ったのですけれど。聞こえませんでしたか?」
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