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そう言われてフォトアルバムを見てみる。
「この一枚一枚に思い出を刻んでいる」
彼女の父親の家族への思いまでが残されている気がした。
「そこで、ひとつお願いがあるのですが」
と、彼女が僕の顔をじっと見つめてくる。
僕は視線を逸らそうとしない彼女の大きな瞳を見つめ続ける事ができず視線を逸らせた。
「どのようなお願いですか?」
と、訊いてしまう。
「絵葉書に一言だけ添えて頂けませんか?」
「……僕が?」
再び彼女の瞳に吸い込まれそうになった。彼女がセーラー服の赤い紐リボンの前で祈るように両手を組み合わせる。
「お願い! お願いです!」
その一途な眼差しから逃げられなくなる。
「写真の裏の父の言葉を真似ても構いませんが……。あなたの言葉を書いてもらった方が良いと思うのです。絵と言葉。視覚と聴覚で訴えかけることができればと」
両手を組み合わせたまま、少しずつ迫ってくる彼女に、断るという選択肢を失ってしまっていた。
降参するように応えてしまう。
「わかりましたから、そんなに近づかないでください」
「そう言ってくれると思っていました!」
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