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彼女がその場で飛び跳ねるのではないかと思ってしまうほど、嬉しそうにしている。
「そんな大袈裟な……」
こうやって笑顔を浮かべている方が彼女には似合っているだろうに、と僕は考えてしまった。
椅子に再び座り直し、僕は描いたばかりの絵葉書を目の前に持ってくる。
黒い色鉛筆を握ると、描かれた彼女とその母親の左側にある余白に言葉を書く事にした。
「わたしはご飯でも作っていますね」
邪魔になるとでも思ったのか、ダイニングキッチンに彼女が向かう。
……僕の手は絵葉書の上で動かない。
そうやって時間だけが経ってしまい、僕は想像することから始めることにする。
その日は休日だ。
連れて行って欲しいなと、前々から父親は妻から言われていた。
中学生になった彼女は両親と出掛けることを面倒に思ったかもしれない。父親が運転する車の中、彼女が窓の外を眺めて、澄ました顔をしている。
何時間もかけてようやく海浜公園に到着し、妻が父親を労っていた。
彼女も言葉にはしないものの、心配だっただろう。
そんな疲れを吹き飛ばしたのが視界一面に広がった青いネモフィラだ。
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