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「やっぱり、ご飯を食べるつもりでしたね?」
僕はそう言って微笑みながら向かいの椅子に腰掛ける。
「どうして急に料理を?」
すると彼女がお淑やかに言った。
「せめてものお礼です。わたしに出来る事はこれぐらいですし」
ダイニングキッチンに置いている正方形のテーブルの上に広がっている料理が、湯気をあげていて美味しそうだ。
餡のかかった揚げ豆腐。鮮やかなサラダと中華スープ。それに大分県の名物である鶏肉の天ぷらであるとり天。そして、鶏めしだ。
大分県民の好物である鶏肉が、ふんだんに使われている。僕らは手をあわせた。
「いただきます」
食事をする時の子供の頃からの習慣だ。どういうわけか、僕はいつも声に出しながら双眸を閉じてしまう。
「……おいしい!」
彼女の料理はとても美味しかった。味だけでなくその見栄えも美しい。
彼女も僕と同じように咀嚼している。箸の使い方がとても綺麗だ。
そして、今更ながらに考えてしまう。
「食べたものは何処に消えているんですか?」
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