僕と彼女(4)

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「はい。父が暮らすアパートのポストに入れておこうと思います。父の様子を見ておきたいですし」  彼女がどこか寂しそうに言う。 「……お父さんの事が心配ですね」  そう応えながら僕は彼女が絵葉書を持って歩く姿を想像する。  彼女が持っている間は絵葉書が他の人から見えることはないとすれば、不思議がられることはないのだろう。 「ひとつ確認したいんですが、あと何枚ほど絵葉書を描けばよいですか?」  と、僕は訊いた。 「それはですね……」  彼女が小さな手を顔の前に持ってくると、親指と人差し指を出して応えた。 「このぐらいの厚さでしょうか?」  親指と人差し指の間が一センチメートルはある。 「それって何枚ぐらいになるのですか?」  すこし不安になった僕は疑問を重ねた。 「ざっと五十枚ぐらいでしょうか」  人づきあいが得意な方ではない僕は年賀状でさえそんな枚数を書いたことがなかった。 「へえ」  と、応えておく。続けて天井を見上げた。 「ふうん」 「大丈夫、きっと大丈夫! 出来ますから、自信を持って!」
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