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僕らは食事を終えた。満たされた気分だ。幸せになる。
洗い片付けは僕がすると、彼女に申し出た。汚れた食器を綺麗にする行為は嫌いではない。
「今のうちに絵葉書を持っていきますね」
彼女がそう言うと、出来上がったばかりの絵葉書を持って扉を通り抜ける。
一人残されたアパートの部屋で、僕は食器の片付けを黙々と進めた。
食器の水滴をふき取り、棚に戻しておく。台所を見回し綺麗になった事を確認した。
一息つく。
「この部屋って、静かだったんだな……」
手持無沙汰になった僕は作業机に向かい、腰かける。預かっているフォトアルバムを手に取ると丁寧に捲った。
「五十枚ぐらいか……」
と、呟きながら、どの写真にすれば彼女の父親を助けることができるのか考えてみる。
捲っていた指が止まった。
「こんな頃もあったんだ……。まあ、当然か」
そこには彼女の母親が写っていた。
その前に髪を肩まで伸ばした小さな女の子がいる。幼稚園児ぐらいだろうか。幼い頃の彼女だろう。
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