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大きなモニターで総合格闘技を観戦する少年は、長い長いあくびをした。
試合はお互い距離を取りながらお互い軽いジャブで牽制し、何度か腿を狙って蹴りを入れていたが、距離がありすぎて簡単に避けた。それを何分も何ラウンドも繰り返してた。
「……つまんない!」
少年はソファーに勢いよく横たわった。
「俺が創った世界で、こんなつまんない試合するなんて、バカなの? いったん止めろ!」
すると、唐突にレフェリーが必死の形相で選手の間に割り込み、ゴングが荒々しく鳴った。
「勝手に中止にすんな! 試合は続けろ! 離れるんじゃなくて取っ組み合いしろ!」
急いでリング上の選手二人とレフェリーは立ち位置に戻り、レフェリーが両選手に試合続行の意思を確認すると、ゴングが鳴った。それと同時に、片方の選手が襲い掛かり、リンクの上で倒れ、揉み合いになった。
「そうだそうだそうだ! リングの上でグッチャグチャに殴り合え! 血が流れるまで戦え!」
両選手はお互い顔面を狙ってガムシャラに殴り合った。何度も転がって上下逆転しつつ、殴り合いは続いた。そのうちお互いの顔が赤く腫れ上がった。その様子を見たレフェリーが慌てて駆け寄ろうとすると、モニター越しで観戦する少年は、ソファーから身を乗り出した。
「おいレフェリー止めんな! 続けさせろ! 邪魔するなら消すぞ!」
レフェリーは顔面蒼白でゆっくりと後退した。選手同士の殴り合いは激しくなり、お互いの鼻血がリングに飛び散った。
「よしよし、続けろ続けろ! そしてどちらかがリングの上で……、飽きた! もういい!」
その言葉が出た途端、レフェリーは選手の間に割って入り、ゴングが何度も鳴った。少年はモニターの電源をオフにすると、ソファーに寝転がってため息を吐いた。
「せっかくこの世界に降りて楽しもうと思ったのに、何だよこの世界。何で俺の思い通りになるのにつまんないんだよ」
少年はつまらなさそうに天井を見たが、ボヤっと見すぎて焦点が合わなくなっていった。
「……散歩するか」
少年はゆっくりと起き上がり、部屋から出た。
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