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「……つまんない」
幾何学的模様に沿ったような外観の建物群と、綺麗に舗装された道路が目につく街では、皆せわしなく歩いていた。しかし、そこに少年がいる事に気が付いた人は、一見平然としながらも、それとなく避けていた。少年はそれに気がついてはいたものの、特別気にしなかった。
少年は街をブラブラと歩いて街の様子を見ていたが、歩くたびにため息が増えただけだった。
「何でこの世界はつまらなっ、いっ!?」
少年はお腹になにかがぶつかった。俯くと、二歳か三歳と思われる男の子がボーッとしていた。
「す、すみません! すみません!」
いきなり女性が割り込むように現れると、男の子を抱き上げ、距離を取ると瞬時の速さで土下座をした。男の子も無理矢理正座させられ、女性は男の子の後頭部を鷲掴みして、頭を無理やり下げた。
「創造主様、どうかお願いします。息子の粗相をお許しください! お願いします! お願いしますっ!」
おでこに強くつけさせられた男の子は、母親の行動に訳も分からず大泣きした。女性は勢いよく男の子の頭をあげると、頬を叩いた。
「こら! 泣かないで! 創造主様に失礼でしょ!」
しかし、男の子は泣き止まなかった。女性は慌てていて完全に混乱した。周囲の人々はその様子に気がつきつつも、少年の顔を見た途端に遠くへと逃げて行った。
その様子を少年は無表情で見ていたが、大泣き中の少年の声が枯れだしたところで二人に近づいてきた。女性が気がつくと、悲鳴をあげて目を見開いた。
「ご、ごごごご、ご、カンベンを! どうか、ごカンベンを!」
女性は何度も頭を下げた。横で泣き続ける男の子の叫び声は完全に枯れていて、ほぼ呼吸の音だけになっていた。
少年は女性の前まで来ると、ゆっくりしゃがんだ。
「顔を上げて」
女性が恐る恐る顔を上げると、少年は微笑んでいた。その表情を見た女性は、すぐに笑顔になった。
「許してあげる、この世界から消えてくれるなら」
女性の表情が一気に絶望に変わった。同時に、親子の身体が透け始めた。
「そ、そんな……」
「俺に粗相した事自体が許さねぇ。創造主である俺の思い通りに動く事ができない奴は、消えろ」
「そ、そそそそ、それだけはごカンベンを! 私はどうなっても構いませんから、息子だけはお許しを……」
「うるさい。親子共々消えろ」
半透明だった親子の姿は完全に無くなった。
それを見ていた人々の一部から悲鳴が聞こえ、人々は少年から完全に遠ざかっていった。その様子に気がついた少年は、眉をひそめた。
「……つまんない。ちょっと刺激がほしくてワザとぶつかるようにここに来て、謝罪して泣きわめく親の表情を堪能したのに、クッソつまんない」
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