最終葬 清葬

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「なんやねん、その目。めんどくさい」  城之内は緋鞠の髪の毛を鷲掴みにし、後頭部を何度も床にぶつける。 「今から数時間後に死ぬのに、よぉそんな目が出来るな。もしかしてお前、まだ命が助かる可能性があるとか思っとるんか? ここはマンションの五階の角部屋で防音機能も完備。しかも隣は空き家や。お前の彼氏はもちろん、誰も助けに来ん……」  そう話している間も、緋鞠は表情一つ変えずに城之内を見つめていた。 「だからなんやねんその目は! 言いたい事があるなら言えや!」  城之内はそう言って緋鞠の頬を思い切り引っぱたき、ガムテープを剥がしてタオルを取り出す。  緋鞠は咳込みながらも城之内を睨み続け、「可哀想な人」と呟いた。 「可哀想? 可哀想なのはお前やろ。あと、お前の彼氏か。どうせやったらお前をめちゃくちゃに犯しているシーンを撮影して送信してやったらおもろいんやろうけど、行方不明では片付けられんようになるからな。警察の真似事をしているお前の彼氏の嘆く顔を見ながらビール飲めたら最高やったんやが」 「警察はもう動いてる……。きっと今頃、創世と一緒にこのマンションを特定してる」  緋鞠が声を震わせながらそう告げるが、城之内は笑顔を崩さない。
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