訃 報

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 創世が部屋に入ると、三人の面接官は軒並み目を見開き、唖然とした顔で固まる。創世はその視線を感じながらも、臆することなく廊下と同じように並ぶパイプ椅子の横に立った。 「順番に自己紹介をお願いします」  中心に座る髪の薄い男がそう告げるのに合わせ、山本という眼鏡男子が自分の名前と出身大学を告げる。その間も面接官の視線は創世に向いていた。  すぐに創世の順番が回って来る。腹から声を出そうと息を吸った瞬間、右端に座る五十代前半と思しき女の面接官が口を開く。 「その白い髪と白いスーツ、面接には相応しくないですね」  いきなり出鼻を挫かれた創世は開きかけた口を閉じ、鋭い目で見つめてくる女の面接官に身体を向けた。 「この白い髪は地毛です。あと、スーツはすんません。こういった真剣な面接の場が初めてで良く分からなくて、清潔感だけを重視してネットで注文しました」  創世はそう言って頭を下げたまま、「白崎創世、二十三歳。明石南高校卒業です!」と声を張った。  顔を上げると面接官は怪訝な顔をしているものの、創世に視線を集中させることは止めていた。  それからすぐに土肥という女が自己紹介を始めた時、創世は自分にしか感じていないであろう臭いに顔を歪める。 ――――三人揃って珈琲臭い。特に真ん中の禿げたオッサン。昼にニンニク料理を食べたんか知らんけど、その匂いも混ざってえげつない。
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