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白創清掃社の従業員に焼香の順番が回ってきた。従業員は自分を含めて六人しかいないと父が話していた事を思い出す。
――――赤堀さんにみどりさん、あとの三人は話したことも無いな。
先頭に立つ赤堀は震える指で焼香した後、創太の遺影を見上げて「創太さん……歩道橋から落ちたくらいで、何で死ぬんすか。何で……」と悔しそうに嘆いていた。
肩を震わせながら洟を啜り、創世の前に立って深く頭を下げてくる。そして、「後で話したいことがある」と呟き去って行った。
――――実際、オヤジの後を継ぐのは赤堀さんで間違いないやろう。みどりさんは事務経理やし、他の三人はまだ入社して十年も経ってない。そもそも最前線で仕事をしていたオヤジ無しで会社が回るんやろうか。まぁ、俺にはどうでも良いことか。
創世は白創清掃社の行く末を心配しながら焼香を終えた従業員を見送る。最後に焼香をした若い女の従業員はその場に泣き崩れ、立てなくなっていた。式場のスタッフが駆け寄り、肩を貸して連れて行く。
――――まるで自分の親が死んだみたいな状態やな。何で俺はこんなにも冷静なんやろう。俺が一番悲しまなあかんのに。
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