第二葬 孤独

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「この明石に戻って来たのは母さんの死がきっかけだ。東京に行って、中学へ上がるまでは仲の良い家族だった。でも、父の浮気が発覚してから母さんは変わってしまってね。毎日のように喧嘩をしていたよ。最終的に母さんは自分の稼ぎだけでやっていくって言い出して、歌舞伎町に小さなスナックをオープンさせたんだ。愛情なんて既に無かった父はあっさりと離婚届に判を押して消えた。それからは酷いもんだよ。母さんはスナックで得た収入のほとんどをホストクラブに使っちゃうし、マンションを売却して汚いアパートに引っ越すし、僕の青春時代は地獄を絵に描いたような日々だった」 ――――うわぁ……。想像以上にヤバイ過去や。そりゃあんな表情になるか。  質問したことを後悔し始めた創世だったが、一度喋り始めた青山は止まらない。 「母さんは僕の事なんて目に入っていないようだった。お気に入りのホストのことで頭が一杯でね。そんな母さんの事が嫌いで、憎くて仕方なかったのに、僕はホストになる道を選んだ。多分、心の何処かで、ホストになれば母さんにまた愛されるっていう馬鹿な考えがあったんだろう」 「へー、そんな過去があったんすね。でも、青山さんくらい男前だったらナンバーワンになったんじゃないんすか?」  重たい空気を変えようと軽いノリで創世が問い掛けるが、青山は眉間に皺を寄せてハンドルをギュッと握って黙り込む。
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