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「母さんが自殺した時、僕はホストの寮に入っていたからすぐに母さんの遺体を発見出来なかった。母さんが自宅アパートで首を吊って数週間経過した後で警察から連絡が入ったんだ。人間が死んで数週間経過した部屋の臭いを、その時初めて知った。そして、その臭いを消す仕事をしている人がいることも初めて知ったんだ」
「それが、特殊清掃との出会いって事っすね」
「悪臭や死の痕跡を簡単に消しているのを見て、まるで魔法みたいだって思った。この仕事なら、僕の掃除の腕を活かせるんじゃないかとも思った。六年間働いていたホストクラブを止めて特殊清掃の仕事を探そうと思ったんだけど、東京から出たいって気持ちの方が大きくなってね。生まれ故郷である明石市に戻って、一からやり直そうと思ったんだ」
――――結局、青山さんの人生全てを聞いてしもうたな。でもなんやろう。こんだけ話してくれるんは俺に心を開いてくれている証拠なんかな。
「すんません、なんか辛い過去を思い出させてしまったみたいで」
創世が前方を見つめたままそう言うと、「それでね」と青山が呟く。
――――いや、終わらへんのかい!
思わずそう叫んでしまいそうになった創世は慌てて口を押さえる。
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