第二葬 孤独

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「明石に戻ってすぐに特殊清掃の仕事を探したんだけど、意外と見つからなかった。とりあえずラブホテルの清掃で食い繋いでいたんだけど、数十年先の自分の人生を想像したら怖くなってね。幼い頃になりたかった自分には絶対になれないって気づいた時、さっさと今の人生を終わらせた方が良いって考えになった。夜中に明石の防波堤に行って海に飛び込もうとしたんだ」 「だ、誰かに止めてもらえたんすか?」 「白崎社長。君のお父さんだよ。たまたま夜釣りをしていた社長が僕の行動に気づいて止めてくれた。実際、自殺をしようとしている人がいても、止めようとする人間なんていないと思っていた。せいぜい警察に通報したり、通行人を探しに行ったりするくらいだと。でも、社長は違った。僕の身体を押さえつけてこう言ったんだ。”水死体の見た目は最低だから止めとけ”ってね」 「ハハ、オヤジっぽいと言えばオヤジっぽい台詞っすね。まぁでも、それがきっかけで白創に入社したんすね」 「あぁ、誰に止められても死のうと思っていた僕は”死に様なんてどうでもいい。死なせてくれ”って叫んだ。その言葉を聞いた社長は”死に様がどれだけ醜くても、生き様だけは綺麗にしてから死んだ方がいいと思うぞ”って言ってくれたんだ。そして、”死ぬくらいならうちで働け”とも言ってくれた。まさか社長が経営している会社が特殊清掃だなんて思わなかったよ。本当、人生って何が起こるか分からないなって思ったね」
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