第二葬 孤独

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「波乱万丈っすね」 「フフ、それを言うなら君もだろ」  青山がそう言ってエンジンを停止する。どうやら、いつの間にか清掃現場であるあかね荘に到着していたらしい。  いかにも一昔前のアパートだと分かる造りで、壁に入っている長いひび割れを見ていると今すぐ倒壊してもおかしくない状態だ。周囲に新築戸建てが多いため、このあかね荘だけ時代から取り残されているようにも思える。 「二階に高齢の女性が一人住んでいるだけで、他に住人はいないらしい。とりあえず、大家の上島さんに連絡してから清掃を始めようか」 「上島さんはこのアパートに住んでないんですか?」 「あぁ、加古川市内に住んでいるらしいけど、此処にはいないね。多分、二階に住んでいる方が亡くなったら取り壊しする予定だと思う。だから近所迷惑にならないレベルの清掃でってお願いしてきたんだろうね」 「老人ホームとかに入ってたら、こんな最後にはならなかったのにな」  寂し気にあかね荘を見上げながら創世が呟くと、青山は「それが出来たらここには住んでないだろうね」と言葉を返す。
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