第二葬 孤独

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「看護が整った老人ホームなんて蓄えがある人しか住めない。計画性をもって貯蓄しなきゃ、年金だけでは満足に暮らせない国になっているからね、今の日本は。子供や孫に頼ればいいって考えもあるけど、迷惑を掛けるくらいなら一人寂しく死んだ方がいいって高齢者も多い。なんにせよ、こういう最期を遂げる高齢者は、今の日本には五万といる」  それだけ言って防毒マスクを装着した青山は、創世にもシューズカバーと防護服を着るように指示した。  創世は防毒マスクを付ける寸前に助手席の窓を少し開いて臭いを確認する。 ――――臭いはするけど、耐えられん程じゃないな。隣家が気密性の高い新築物件やと気にならんレベルやろう。  車から降りた二人は老朽化した階段の真下にある扉の前でしゃがみ、線香を焚く。扉のすぐ隣には、本條と言う表札が上がっている。  一本ずつ線香を持つ創世と青山は両手を合わせながら「失礼します」と言って玄関を開いた。  死臭より先に感じたのは酒の臭いだった。 ――――みどりさんが言っていたとおり、ゴミは少なそうやな。
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