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「い、いえ、なんでも無いっす」
創世が首を振って誤魔化そうとした時、再び(アイタイ)という遺念が聞こえてくる。
――――会いたい相手は、息子さんですか?
創世が心の中で問い掛けると、肯定するように(アイタイ)という遺念が響いた。死者は一つのメッセージしか現世に遺すことが出来ないのだろうか。
創世がアルバムを開いて色褪せた写真に写る少年を指差すと、ひと際大きい(アイタイ)が頭の中で鳴り響いた。
――――確定やな。本條さんの遺念を天国へ送るには、息子さんと会わせるしかない。
そう思った創世は遺品を収めたダンボールの蓋を閉め、青山の背中に近づく。
「青山さん、ここに本條さんの息子を連れて来たいんすけど」
「はぁ? そんなの無理に決まってるだろう。遺品の引き取りも全て拒否する息子だぞ? 話なんて聞いてくれるはずない」
「それでも、息子さんが来ないと本條さんは成仏できない。清掃は出来ても、清葬は出来ないんです」
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