第一葬 清葬

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 通夜は終わり、弔問客がぞろぞろ帰り始める。赤堀が喪服の間をすり抜け、創世の所へやってきた。年中釣りに行っているせいで浅黒い肌が特徴的だ。 「今日はオヤジの為にありがとうございました。あっそういえば焼香の時、何か話があるとか言ってましたよね」 「いや、まずは謝らしてくれ。俺が電話を掛けた時、面接中やったんやろ? 事務所に戻ってからみどりに聞いた」 「ハハ、気にせんといてください。どうせ落ちてました。白スーツで行った時点で結果は決まっていたと思うし。せめて今日みたいに喪服で行けば……」  創世がそう言って苦笑いを浮かべながら後頭部を掻いた後、赤堀は頬を引き締め、タイミングを見計らって喋り始める。 「うちに来てくれへんか? お前ならきっと、うちでやっていける。いきなり社長の後継ぎになれとは言わん。とりあえず見学だけでもええから……」 「俺、白創(はくそう)で働く気は……」 「分かってる。社長からもそれはよう聞かされとったからな。でも、このままやと白創は確実に潰れる。創世も分かっとるやろうけど、社長は現場第一主義で清掃の半分近くを一人でやっとった」
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