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思い返せば、その日から運命は決まっていたのだと思う。
だから、彼と何度目かに会ったあの日のことも、いつものようにそういう運命だと思った。
だけど、あの日あの瞬間から、私の時は止まったまま。
私の時を止めたあの人ともう一度会いたい。だから今日もこの駅で待っている。
あの人を見つけた時のシミュレーションは何度もしている。
どうしたら私の声が届くか、どうやってあの人の肩を叩くか。
駅のホームで、人が少しまばらになってきた時、あの人を見つけた。
こういう時は誰だって緊張するのだろう。一度大きく呼吸をすると、空気が揺れる音がした。電車が来てしまう、今しかチャンスはない。
意を決してその背中に手を伸ばし、線路のそばに立つあの人に聞こえるように、私は声をかけた。
「会いたかった。」
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