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二人で縺れるようにしてベッドへ移動し、もどかしい気分で互いに服を脱いだ。
上着とシャツを脱ぎ捨て、スラックスを足元に落とす。見つめ合ったまま下着のウエストに指をかけると、阻むように腰を抱かれた。そのままベッドに押し倒され、男を見上げる形になる。
「ちょっと、あんまり煽らないでください。また出そうになるから」
香川が荒い息を吐きながら三輪の腿に跨り、中途半端にはだけていたシャツを脱ぎ去る。三輪は恐る恐る手を伸ばし、露になった香川の胸に指で触れた。
「すごいな、全力疾走の後みたいだ」
「自分でもビックリしてます。俺ってどんだけ主任のこと好きなんだろうって」
さらりと告げられた言葉に、三輪は目を瞬いた。「好き」なんて、自分には一生縁のない言葉だと思っていた。
「意外? 主任のことはずっと好きでしたよ。不器用だけど誠実で、人にも自分にも嘘がつけない。いい上司に恵まれたと思ってました」
「ああ、上司として……」
「好きの種類が変わったのは、一緒に昼飯を食べるようになってからです。嫌いなものを嫌いって言えない、意地っ張りなとこがかわいいなって。くっつくと小動物みたいにビクつくくせに、仕事中はストイックな大人の男の色気がムンムンで……ギャップ萌えっていうのかな、こういうの」
「おい、なんだそれは――」
男に組み敷かれた情けない格好で、三輪は柳眉を逆立てる。小動物だの、ギャップ萌えだの、人をバカにしているとしか思えない。
「でも一番ガツンときたのは、こんな俺でも好きになってくれる人はいるって言ってくれた時です。口先だけでならなんとでも言えるけど、俺の格好悪いところを知っても主任は態度を変えなかったでしょう? こういう人が俺を好きになってくれたらなあって思った」
そう言うと、香川は照れくさそうに笑って、三輪の肩口に顔を伏せた。柔らかな髪が首筋を掠め、くすぐったさに肌が震える。
「寒いんですか? 乳首が勃ってる」
とんでもなく恥ずかしい指摘に、心臓が派手に暴れ出す。その上敏感な尖りを指で摘ままれ、三輪はヒッと引き攣った悲鳴を上げた。
「お正月に飾る赤い実、南天だっけ。主任のここ、あれみたいでかわいいですね」
敏感になった尖りを指で押し潰され、捩じるように摘まれる。そこがいくらか大きくなると、今度は唇で挟んで緩く引っ張られた。
「や……、ふ、ああっ……!」
妙な声が漏れてしまい、慌てて手のひらで口を押える。胸を弄られて感じるなんて、まるで女性みたいだ。焦る三輪のことなどおかまいなしで、香川は執拗に乳首を嬲った。
指で刺激し、舌で転がして、きつく吸う。粒を舌先で舐りながら上目遣いで見つめられ、自然と腰が前後に揺れた。
「は、あ……っ、ふあっ……」
「下着に染みができてる。俺の腹で擦ると気持ちいい?」
冗談じゃない。中がぬるぬるして、過去最高に気持ちが悪い。気持ち悪いはずなのに、どういうわけか腰の動きを止められない。
「いい……すごく、きもちいい……っ」
思いとはちぐはぐな言葉が、口から勝手に滑り出る。硬く引き締まった腹に先端を擦りつけながら、三輪はバカみたいに何度も「いい」と繰り返した。腰を揺する度、先走りで濡れた下着がくちくちといやらしい音を立て、その音にいっそう煽られてしまう。
「は……、か、がわ……香川っ……」
胸に伏せた男の頭を抱き寄せ、うわ言のように名前を呼ぶ。頭皮を撫でて髪を梳き、項に指を這わせると、夢中で乳首を舐っていた男の動きがピタリと止まった。三輪の両脇に手をつき、ふるりと胴を震わせた後、男らしく呻いて荒い息を吐く。
「っ、は、ごめんなさい、俺、また――」
「いい。俺の体で気持ちよくなってくれたのなら、うれしい」
三輪を見つめて、香川が泣き笑いのように顔を歪ませる。男前も形なしだ。だけどかわいい。雄くさい飢えた表情も魅力的だが、恥じ入って瞳を揺らす香川はとんでもなくかわいかった。
もっと気持ちよくしてやりたい。感極まった時の顔が見てみたい。そのためならどんなこともできるような気がした。
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